幼児教育課程必須曲「おべんとう」の指づかいと練習ポイント
「おべんとう」作詞:天野 蝶 作曲:一宮道子は、幼児教育課程でまず覚えるべき1曲です。
現場に出たら、毎日のように歌う歌です。
というわけで、今日の投稿は、ピアノ初心者の幼児教育科専攻の方向けとなります。
また、ピアノ中級者の「自習したい方」が「指づかい」を自分で決められるためのヒントにもなるかもしれません。
必要に迫られてピアノを始める方
短大の幼児教育科に推薦入試で合格してから、必要に迫られて慌ててピアノ教室の門を叩いた方。
楽譜の読み方の第一歩から初めて、ピアノを弾くための知識、両手をバラバラに動かす練習。そして4月の入学後には、もう両手でピアノを弾けていなくてはならないのです。
わあ、大変。
子どもなら、数カ月かけて一歩一歩積み重ねていくことも、数週間で一気に覚えなくてはなりません。
大人の理解力を駆使して、頭で考えながら、なんとか体に覚えこませるという道のりですね。
学校では単位がかかっていますし、2年後に卒業したら、否応無しに現場でピアノを弾き歌いして、それで「収入を得る」のです。必死です。
学校でももちろん授業はありますが、数人ずつのグループレッスンですし、先生のお手本や説明はあっても、一人ずつ手取り足取り教えてもらうことは望めません。そんな生徒さんたちが街のピアノ教室である私の所に駆け込んできます。
いきなり「童謡唱歌」を両手で
楽譜の読み方を覚え、指番号を覚えたら、すぐに「曲」が課題に出ます。と言っても、子どもたちのレッスンとは違い、クラシック曲のレパートリーはとりあえず要求されません。テキスト(メソッド)は学校によって色々だと思いますが、「童謡唱歌」の数々の弾き歌いの課題は当然与えられます。現場で即戦力となれるよう、学生時代にレパートリーを100曲くらい仕込まねばならないのです。
少しピアノが弾ける人なら、ちょっと練習すればなんとかなるでしょう。でも、そんな簡単な歌でも、初心者にとってはまず右手のメロディーをものにするだけでもひと苦労です。
「保育の四季 幼児の歌110曲集(株式会社エー・ティ・エヌ)」は編曲も易しく、幼稚園・保育園でよく歌われる歌は網羅されていて、課題になることが多いようです。けれども、指番号が付いていません。メロディーを知らない場合はYouTubeで聞けます。楽譜を見て弾くべき鍵盤の位置はなんとか探すことができます。けれども、いざ弾こうとしても、「どの指を使うべきか?」がわからなくて、自習できない場合が多いようです。
うちにくる生徒さんも、そこに苦労しています。
一緒に指番号を考えて楽譜に書き込んであげると、自宅で存分に練習できるようです。
ピアノ演奏のための指番号の決め方
指番号は、広い音域の曲を5本ずつの指(もっとたくさん指があればいい?!)で無理なく弾くために、「ポジション」という考え方で、1指をどこに置くと続きがスムーズに弾けるか合理的に考えて決めて行きます。
基本的に、隣り合った鍵盤には、順番に指を載せます。
1指(親指)が「C(ド)」なら、2指(人差し指)は「D(レ)」、3指(中指)は「E(ミ)」、4指(薬指)は「F(ファ)」、5指(小指)は「G(ソ)」という具合です。これを「5指のポジション」と呼びます。
というわけで、今日はまず、必須課題の「おべんとうのうた」の右手について考えてみました。
著作権の関係もあるので、歌詞は載せません。ですから、手元にご自身の楽譜を用意してご覧いただくと、わかりやすいと思います。
そして、リズムのポイントについても後半で触れていますので、最後までご覧になって、参考にしていただけると嬉しいです。

「おべんとう」の指づかい
最初のE(ミ)を1指で弾きます。
次のG(ソ)音は3指ではなく、2指で弾きます。ひとかたまりのフレーズの中の最高音である「高いC(ド)」を5指で弾くためです。
指づかいが書かれていない箇所や、丸付き数字でない指づかいの箇所は、「5指のポジション」原則で弾きます。
また、繰り返し同じ音型の箇所の指づかい表記は省略しています。全てを指づかいの数字に頼って弾くのではなく、音符の模様を見て弾くことに慣れて欲しいからです(別記事でこのことについて、触れていますので合わせてお読みください)。
丸付き数字は、この5指のポジション原則から外れる指づかいとなる箇所です。1指を「C(ド)」、2指は指を開いて、「E(ミ)」とか、1指そのものを「C(ド)」から「E(ミ)」へと移動させる場合などです。
指づかいがわかったら、あとはスムーズに弾けるように練習あるのみ!! とはいえ、この曲はちょっとリズムが難しいのです。
「おべんとう」のリズムの注意点
「おべんとう」の歌は、リズムに特徴があります。私の生徒さんも随分苦労していました。

赤丸をつけた箇所は全て同じリズムです。
「タッカ」と「タタ」のリズムの組み合わせですが、これを「タッカ タッカ」と両方付点リズムで弾いてしまうのです。
難しいリズムは、言葉に置き換える
難しいリズムは言葉で置き換えるとわかりやすくなります。
例を考えてみました。
「エンヤ トット」 でどうでしょう?

正確には、「エンヤ」は3連符、「トット」だと跳ねて弾いてしまいそうですが、「エ」を強調して「エーンヤトット」のように唱えながら弾いてみると、うまくいくと思います。
このリズムを(手持ちの楽譜をご覧になって)
「エーンヤ」=「おーべ」「うーれ」
「トット」 =「んと」 「しい」
の部分に置き換えます。
※赤丸で囲った箇所は全てこの「エーンヤトット」のリズムです。
ピアノって難しい、から、楽しい
一人で楽譜を読んで演奏するには、音の高低、リズムがわかること、鍵盤をどの指で弾くかわかること、さらに、技術的に弾きこなすテクニックがなければなりません。
ピアノって、つくづくハードルが高い難しい楽器だなあと思います。
だからこそ、弾ける喜びが大きいし、長く続けたくなる楽器なのです !!
どなたにも楽しいピアノライフをと願います。
仕事で必要だから、という幼児教育科の学生さんも、きっかけはどうであれ、長くピアノを続けてくださることを祈っています。